日本財団 図書館


 

昔の苦労も忘れて

松井クニヨ
秋田県
四十年前を顧みますと、そのころの私は悩み苦しみの毎日でした。子供が就学期でしたからです。普通の小学校に入学できたら親元から通学できるが、ろう学校へ入学すると寄宿舎へ入らなければならない。それを考えると可哀想で迷いました。そして、子供の将来を考え障害児は特殊教育を受けるのが適切と思い、ろう学校に入学させることを決心しました。
子供は、すぐ友だちができて元気でしたが、親の私は別れて帰る途中、涙が止まりませんでした。毎日、子供のことを思い仕事が手につきません。日曜ごとに四キロの道を徒歩で駅へ、朝六時二十分の列車で子供に会いに行きました。それが何よりの楽しみでした。
また授業参観にもときどき行きました。普通の小学校では考えられない教育、指導、子供一人一人の頬に、先生の手が添えられ、筋肉の動きにより発音の出し方を知ることができるのだ

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION